355F1の良い所はきっと現代スーパースポーツにない車体の小ささとリトラクタブルヘッドライト最終型ともいえるそのデザイン、そして特筆すべきはフェラーリの中でも量産車で1番甲高いフェラーリサウンドではないでしょうか? 車に乗り込むと360モデナに比べて少し狭いのですが落ち着ける感じです。 ハンドルの角度が少し気になるのですがF40もこの角度なのでこの時代の特徴としておきましょう。 セキュリティーのスイッチを押してキーをひねってエンジンをかけます。エンジンは簡単にかかり、少し暖気してレーシングしてみると4000回転ぐらいからはなんとも言えない美しいフェラーリサウンドがします。 ブレーキを踏んでハンドル右側のパドルを引くと後ろの方でガシャンと言う音がしてメーターの真ん中にあるシフトインジケーターがNから1に変ります。 このガシャンが現在のフェラーリには無くなったのですがこの時代はあったんです。そういえば最近こんな作動音を聞かないな~なんて思いました。 アクセルを少しずつ踏み込むとクラッチが繋がります。 あまりにハンクラが上手に決まったのでこの固体が当たりなのかと思ったらクラッチのオーバーホール済みで新品なんだそうです。 私にとってF355は360チャレンジとの比較をする為に355チャレンジをドライブしたのが一番最初でした。 その時に感じたのは360のパワー。 そして355の扱い易さ。 まずF355のエンジンは現代スポーツカーと比べるとパワーがありません。10年前の車になるのですから当たり前。 と、言いますか最近のスーパースポーツカーはパワーありすぎです。試乗する時どこのメーカーさんも「トラクションコントロールは切らないでください。」と言われます。 私はそんな事言われると余計に切って乗るのですが(ひねくれ物です)しかし事実殆んどのユーザーさんに500馬力からのパワーはコントロールできません。 では今からドライビングの練習をしたい方には何を勧めるか?この車両は結構お勧めの1台です。 程よいパワーと程よいダルさがあり車のコントロールを楽しく憶える入門用には抜群です。 この個体は355F1、つまりF1マチック(オートマ)です。量産車で考えると世界で一番最初にシングルクラッチをコンピューターでオンオフするF1マチックが採用されたのがこの355F1です。 と、言ってもまだシフトダウン時にブリッピング(アクセルをあおる)なんて気が利いたことはしてくれません。 なのでスムーズに走らせるにはドライバーが補ってドライブするコツが必要になりますし、操作がうまく決まると本当に気持ち良い。 この個体はクラッチをはじめ各部をオーバーホールしたてと言うのがあり操作感が良く、フェラーリサウンドが心に響きいつにもましてお勧めの1台でした。
桧井保孝 (ひのいやすたか) 1969年 広島県生まれ 繊細かつ丁寧なドライビングは評価が高く、フォーミラカーからGTカーまで何でも乗りこなす器用なドライバー。 また、「日本一のフェラーリ使い」の異名を持ち、フェラーリ関連のイベント等ではオフシャルテストドライバーとして、F1やFXX等のドライブでもお馴染み。 レースの他、雑誌のライターや各イベント・走行会等でも講師として活躍。